スクールブログ

黒い雲が垂れ込めた冬の夕方。

　営業職の山本翔太（仮名）は、会社を出た瞬間に足を止めた。

スーツは泥がはね、資料はシワだらけ。

クレーム対応が続き、自信がすり減る音が本当に聞こえた気がした。

　「なんで俺は、こんなにうまくいかないんだ…」

思わず空を見上げる。

完璧からほど遠い自分が、とても情けなく思えた。

そのとき、小さな看板が淡く光った。

　「ビジネス脳トレ速読 川崎スクール」。

胸の奥がじわっと熱くなる。

なぜか分からないけれど、

“ここに行けば何か変わるかもしれない”

そんな根拠のない期待が生まれた。

スクールの扉を開けると、明るい声が跳ね返ってきた。

「ようこそ！今日からよろしくね〜！」

その声に思わず緊張がほぐれる。

席に着くと、壁に貼られた言葉が目に入った。

　“最初から上手くできなくていい。”

胸がきゅっと締めつけられる。

まるで自分に向けられた言葉みたいだった。

　レッスンが始まると、翔太はさらに驚くことになる。

インストラクターがこう言ったのだ。

　「速読は脳の“可塑性（変化する力）”を最大限に使うトレーニングなんです。

　『脳科学でも読むスピードの向上は、前頭前野の機能向上に直結する』と語っています」

翔太の目が大きく開いた。

　前頭前野──判断力、集中力、思考の司令塔。

速読はただ速く読むだけじゃない。

　「脳全体を活性化させて、思考力の底上げをする行為」

そう説明を受けた瞬間、泥だらけの心に一筋の光が差した。

レッスンでは、目の可動域を上げるトレーニング、

　ワーキングメモリ（作業記憶）を広げるワーク、

　デュアルタスク（同時処理能力）を鍛える練習もあった。

　「脳って、使う部分が増えると“処理速度”が上がるんですよ。

だから速読を続けると、脳が勝手に“高速モード”になり始めるんです」

　インストラクターの説明に翔太は呆然とした。

自分はずっと、「読むのが遅い＝能力が低い」と思い込んでいた。

違った。

遅いのではなく、

ただ“脳の回路が眠っていただけ”だったのだ。

　レッスンが進むたびに、翔太は泥だらけの心が洗われていく気がした。

ミスをしても笑ってくれる仲間がいる。

間違えても否定されない先生がいる。

川崎スクールの空気は、

　「挑戦そのものが尊い」

という価値観で満ちていた。

　ある日、翔太は読み取りトレーニング中に、

今まで感じたことのない“集中の深さ”を味わった。

文字がスッと頭に入る。

理解が速い。

ページをめくる手が自然に動く。

　「え…俺、できてる？」

胸が震えた。

　その瞬間

“カッコ悪い自分を見せ続けたから、ここまで来られたんだ”と気づいた。

　泥だらけで、

　格好悪くて、

　もがいていた自分。

その姿こそが、

脳を成長させる材料であり、

挑戦の証だったのだ。

翔太は思わず天井を見上げた。

涙がにじんだ。

　「俺、変われるんだな…」

脳は年齢と関係なく変化する。

インストラクターの言葉が頭をよぎる。

　「挑戦する人の脳は、必ず応えてくれる」

今、翔太の脳は確かに応えていた。

　川崎スクール

それは“読む技術”ではなく

　「脳の未来を開く場所」だった。

完璧じゃなくていい。

泥だらけの挑戦でいい。

その積み重ねが脳の回路を変え、

人生も変えていく。

翔太はスクールを出ると、空を見上げて笑った。

　今日も少しだけ、昨日より賢くなった気がした。