川崎スクール
2025.10.09
『速読ロード〜挑戦のとき〜』後編
『速読ロード〜挑戦のとき〜』後編
秋の風が少し肌寒くなってきたある日、4人はいつものようにピンクのTシャツを着て、スクール近くの路地を歩いていた。
夏の終わりに感じたワクワクは、今や確かな「覚悟」に変わっていた。だけど、その裏にはそれぞれの壁が立ちはだかっていたのだ。
営業マンだった彼は、仕事のノルマとレッスンの両立に苦しんでいた。
元工場作業員の彼は、家族からの理解が得られず「いい歳して何してるの?」という言葉に心が揺れた。
銀行員の彼は、長年自分を押し殺してきた癖が抜けず、速読でもつい無意識に安全圏に逃げてしまう。
そして、サラリーマンだった彼は、仲間と比べて成長が遅い自分に焦りを感じ、心が折れそうになっていた。
そんなある日、レッスン中に事件は起きた。
集中トレーニングの最中、銀行員の彼が突然立ち止まったのだ。
「…もう、俺には無理かもしれない」
教室の空気が一瞬止まった。
レンコン社長は、静かに彼のそばに歩み寄った。
「なぁ…お前、最初に来た日のこと覚えてるか?」
「え…?」
「変わりたいって言ってたよな。あのときの顔、俺、忘れてないぞ」
その言葉に、彼の心が少しずつほどけていった。
彼だけじゃない。全員がどこかで挫折しかけていたのだ。
その日の帰り道、4人はいつもよりゆっくり歩いていた。
「俺、家族にバカにされた」
「俺も仕事、全然うまくいってない」
「俺なんて、途中で諦めそうになった」
それぞれの胸の内を、初めて本音で語り合った夜だった。
レンコン社長は空を見上げて言った。
「いいじゃん、それで。失敗して、落ち込んで、それでもまた戻ってくる。俺たちは“青春をもう一度やってる”んだからさ」
次の週から、空気は少し変わった。
レッスンに来る姿勢、集中する表情、終わったあとの笑顔。
誰もが誰かを励まし、誰かに支えられていた。
「なぁ、また4人で歩こうぜ」
レッスン終わりの路地を、いつものように肩を並べて歩く。
ピンクの背中が並ぶその姿は、まるで挑戦を始めた高校生のようだった。
武道館なんてまだまだ先の話。
でも、彼らの挑戦はすでに始まっていた。
それはステージに立つ前に、心のステージに立ち続ける日々のドラマだったのだ。
風が少し冷たくなった空の下、4人の背中は、確かに未来に向かって歩いていた!
