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『速読ロード〜挑戦のとき〜』後編

『速読ロード〜挑戦のとき〜』後編


秋の風が少し肌寒くなってきたある日、4人はいつものようにピンクのTシャツを着て、スクール近くの路地を歩いていた。

夏の終わりに感じたワクワクは、今や確かな「覚悟」に変わっていた。だけど、その裏にはそれぞれの壁が立ちはだかっていたのだ。


営業マンだった彼は、仕事のノルマとレッスンの両立に苦しんでいた。

元工場作業員の彼は、家族からの理解が得られず「いい歳して何してるの?」という言葉に心が揺れた。

銀行員の彼は、長年自分を押し殺してきた癖が抜けず、速読でもつい無意識に安全圏に逃げてしまう。

そして、サラリーマンだった彼は、仲間と比べて成長が遅い自分に焦りを感じ、心が折れそうになっていた。


そんなある日、レッスン中に事件は起きた。

集中トレーニングの最中、銀行員の彼が突然立ち止まったのだ。

「…もう、俺には無理かもしれない」

教室の空気が一瞬止まった。


レンコン社長は、静かに彼のそばに歩み寄った。

「なぁ…お前、最初に来た日のこと覚えてるか?」

「え…?」

「変わりたいって言ってたよな。あのときの顔、俺、忘れてないぞ」


その言葉に、彼の心が少しずつほどけていった。

彼だけじゃない。全員がどこかで挫折しかけていたのだ。


その日の帰り道、4人はいつもよりゆっくり歩いていた。

「俺、家族にバカにされた」

「俺も仕事、全然うまくいってない」

「俺なんて、途中で諦めそうになった」


それぞれの胸の内を、初めて本音で語り合った夜だった。

レンコン社長は空を見上げて言った。

「いいじゃん、それで。失敗して、落ち込んで、それでもまた戻ってくる。俺たちは“青春をもう一度やってる”んだからさ」


次の週から、空気は少し変わった。

レッスンに来る姿勢、集中する表情、終わったあとの笑顔。

誰もが誰かを励まし、誰かに支えられていた。


「なぁ、また4人で歩こうぜ」

レッスン終わりの路地を、いつものように肩を並べて歩く。

ピンクの背中が並ぶその姿は、まるで挑戦を始めた高校生のようだった。


武道館なんてまだまだ先の話。

でも、彼らの挑戦はすでに始まっていた。

それはステージに立つ前に、心のステージに立ち続ける日々のドラマだったのだ。


風が少し冷たくなった空の下、4人の背中は、確かに未来に向かって歩いていた!