川崎スクール
2025.07.22
『あの夏、君と見上げた速読の空』
『あの夏、君と見上げた速読の空』
「なんで本をそんなに速く読むん?」
夏の教室。窓の外には蝉の声、扇風機はやる気なさそうに回ってた。
君は、川崎スクールのパンフレットを握りしめてた。
“ビジネス脳トレ速読”――名前だけ聞いたら、大人の世界みたいやけど、
なぜか君が言うと、すごく青春っぽく聞こえた。
「なんか、人生が速く動き出す気がして」
そう言って、笑った。
スクールの帰り道。
並んで歩いた川沿いの夕暮れ。
「私は、もっと知りたい。本のことも、自分のことも、人の気持ちも」
君の横顔を見てると、
本当はずっと、俺も知りたかったんだって気づいた。
でも、ある日ふと思った。
俺は「速く」なりたいわけじゃなかった。
君と「同じ景色を見たい」だけやったんやって。
速読の技術は、すごかった。
けど――
俺には、もうちょっと立ち止まることのほうが大事やったとよ。
花火大会の夜、
君は空を見上げながら言った。
「読む速さも、歩く速さも、人それぞれでいいよね」
「うん。俺は、ちょっとゆっくりでいい」
「知ってる。だから一緒に歩けたんだよね」
そのとき打ちあがった大輪の花火。
君は少し泣いてて、俺はなんか、泣きそうで。
けど、言わんかった。ずっと、ありがとうって。
あれから、俺は速読の道には進まんかった。
でも本を読むとき、君の声が時々する。
「あ、それ飛ばしていいやつ」「ここ、大事よ」って。
人生のすべてが速さやない。
一緒に学んだ時間は、
俺にとって“人生の核心”みたいな夏やったけん。
今でも、夏の花火を見ると、
あの時の君と、速読のページが、
心の中でふわっと開く――
#川崎スクール